ある大手メーカ―の設計関連部署で働いていた時分、設計データは過不足なく過去の経験値だけでなく設計標準として整えられ、しかもその標準のレベルが険しいところで採用される検討を可能にするデータであったりした。退職後、自営を始めてしばらくして、巷の文献にはその険しさを検討するに値する設計資料が見つかりがたいのには精神的に大きな負担になった。その状況を打破しようとして、活路を探したのがインターネットの世界であった。丸善の機械設計便覧(数万円もするが、必要があればこそ神田の古書店などを回って購入したりした。)、設計の計算式の一義的な根拠の提示には格好の文献である。
設計の険しさという一例を掲げてみると、油圧シリンダーの座屈強度の計算が例として挙げられる。インターネットでも、設計の便覧でも座屈の計算はロッド径が支点距離分の長さの座屈計算式で計算するよう判で押したようにどの資料でもこのように記載されている。この数値に安全率を考慮して決めるのだが、この安全率が2.5であったり、3であったり、4であったりほとんど根拠のない数字による。油圧シリンダーを段付き軸の座屈になぞらえて計算することでもっとシビアな検討ができるのではないだろうか。シェイプアップした機構設計を実践するためには,ある意味、先端を行く計算モデルが必要になるのだが、インターネットでも結構見つけがたい。油圧シリンダーの座屈計算にはDNV社の資料を見つけることができたが、認証機関の計算式であり、そのまま採用する訳にもゆかない。たまたまだが、実験データから座屈モデルを計算式として構築した例を知っていて、再現してみたのが当方のシリンダー座屈強度計算ソフトである。
これは、一例でしかないのだが、大手企業ならいざ知らず、中小メーカーの設計部署ではこのようなデータを得るのは絶望的というのが現実である。小生のブログがこの設計の甘さからの脱却に向けて一助になれれば本望である。インターネットの世界はURLが不意に閉鎖されたりして情報が散発的になってしまうことが多い。このフォローを可能にできないかと考えたのがこのブログの意図の一つである。中小メーカのエンジニアには本ブログを貪欲に活用していただければと思う。
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